「市長選挙」を振り返って

吉川市長選挙は、22日(日)投開票が行われ、無所属で前県議の中原恵人候補(44歳)が5期目を目指した無所属(自民・公明推薦)で現職の戸張胤茂候補(67歳)を破り初当選を果たしました。開票結果は、中原さん14,176票、戸張さん11,916票で当日の有権者数53,721人、投票率48.98%(前回39.46%)でした。

戸張さんは前回選挙(4年前)より293票多い11,916票を獲得。中原さんは戸張さんに、2,260票の差をつけて当選した。当日の有権者数は、前回より2,548人増加し、投票率アップの効果で、有効票は6,176票増えた。投票率のアップが勝因の一つであることは間違いないと思う。投票率が9.52ポイントアップし、しかもその多くの票が中原さんに入ったと考えられます。

吉川市は今年1月、人口7万人となりました。これまでも、新たな住民が増え続けてきましたが選挙への関心も薄く投票率は伸びてきませんでした。今回の結果は、自民・公明・共産等、組織票の影響を大きく受ける従来型選挙から、「支持政党なし」層の人たちの意向が反映される、都市型選挙に近づいてきていることを示しているのではないでしょうか。支持政党なし層の多くは、新住民でありこの傾向は今後さらに進むと思います。

投票率が前回より約10ポイント伸びたことが勝因の一つですが、それでは普段あまり選挙に行かない人々を投票所に向かわせた力はなんだったのか。私は、『市民の空気、気持ちの変化』と『候補者そのもの』だった思う。少し具体的な内容でまとめると

1  【市民の空気、気持ちに変化が生まれていた】

『4期16年は長すぎる。そろそろ交代していただいた方が良いのでは』といった声が市街地だけでなく、吉川全体で起こっていた。その背景には、4期16年の「戸張市政」に対する疑問と不信があったのではないでしょうか。

● 特にここ数年、吉川の行政は市民の方を向いて仕事をして来なかった。市民生活に影響のある政策や事業、問題への市の対応・関与は、特定の団体や人々に向いており全体の奉仕者としての立場を忘れていたと思います。産業廃棄物中間処理施設の建設、水道水フロリデーション、指定医療機関除外(予防接種)問題等では、地域住民や市民の声を無視し、赤ちゃんや小さな子ども持つ母親たちの願いを受け入れず負担を強いてきた。市民を守るべき行政がその役割を果たさず、自分たちは正しいと居直る姿勢に対し、『何かおかしい』『このままで大丈夫なのか』との疑問や不信は、静かに広がっていたと感じます。さらに「救命士暴行事件」の告訴取下げ関与は、トップが公益(公の組織や部下そして市民)を守らず、個人の利害関係を優先する姿を露呈しました。

●また、市の公共工事発注や教員住宅跡地の売却に係わる不自然な契約等も影響したと思います。その前兆は4年前の市長選挙の際、戸張さんの資産形成や事業発注を巡り癒着や疑惑があるとのビラ、いわゆる「怪文書」が配布された時からくすぶり続けていました。「怪文書(活力吉川・停滞した市政を変えよう)」で指摘されている6項目の利権疑惑は、相当内部の事情に詳しくなければ書けない内容した。その後、県警が動いているとの情報もありましたが、これまで何もなかったことからすると、『事実無根』であったか、決定的な証拠がつかめなかったということでしょう。しかし、「権腐10年」権力は腐敗するということが何となく伝わってきた結果ではないでしょうか。

●中原市長の誕生は、一言でいえば、『むら社会』が崩壊し始めたことだと思います。岩盤を支えてきた利害関係者、後援会、自民党・公明党、そしてよく分からない共産党の影響力が相対的に低くなってきたということではないでしょうか。

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2  【候補者の魅力と対照的な戦いが勝利につながった】

『4期16年は長すぎる。そろそろ交代していただいた方が良いのでは』という空気の中、5期20年を目指す現職「戸張胤茂」さんとの一騎打ちとなったことも勝因の一つだと思います。時期や相手が異なっていたり、複数の候補者との戦いであったら結果は違っていたかもしれません。「中原恵人」さんと「戸張胤茂」さんは、すべてが対照的でした。イケメンで若く爽やかな青年、明るくクリーンな印象、政治の垢にまみれていない新人と地元生まれで長い間議員や市長を続けてきた名士で有力者、経験豊かな政治家との戦いは、選挙への関心を高めました。戸張陣営は自民党・公明党や団体、組織をフルに動かした従来型の選挙。対する中原陣営は、個人一人びとりとのつながりを広げていく、ボランティアと勝手連が動きまわった選挙だったように思います。同じ土俵での戦いはしなかった。地縁・血縁もなく、頼りにする政党や組織もない。そんな状況の中でゲリラ戦やアメーバーのように浸透してゆく選挙だったと思います。型破りで常識はずれ、ちょっと変で面白い魅力的な中原さんに若者から中年、老人たちまでが彼に吸い寄せられ、自ら夢中になって応援した結果の勝利だったと思います。

●前回の市長選挙の候補者は、もともと同じ自民党で、いずれも地元の土地持ちでした。同じ系譜の人たちで、誰がなってもそう違わない(変わらない)という中で行われました。新・旧住民の関心も低く投票率は40%を下回る選挙でした。低い投票率では当然、現職の強みを発揮した戸張さんが有利だったと思います。しかし、今回はよそ者・若者・ばか者(変わり者)が相手でした。おのずと関心も高まり、約10ポイントの投票率アップに繋がったことで、変化が生じたと思います。

●市内19か所の投票区での投票結果を見ますと、大票田である市街地の投票所での投票率がアップしたことが中原さんの票を伸ばし、当選に繋がったと思います。しかも、子ども連れの若い世代の方々の投票が増えていると思います。投票率の高では前回同様、下広島自治会館(53.88%)や東中学校(51.13%)ですが、投票者数が少ないため全体への影響は大きくありません。各投票所とも軒並み投票率(*注1)は上がりましたが特に市街地で目立ったのは、市民交流センターおあしす・中央中体育館・栄小体育館・中曽根小体育館などで、おあしすの投票率は48.07%で、前回より11.38ポイントもアップしました。女性の投票率は50.78%(前回40.14%)、男性47.20%(38.78%)で女性票の伸びも顕著でした。女性の支持が高い中原さんにとって、追い風となりました。毎回投票率の低い吉川団地ですが、今回は32.96%(前回25.14%)と7.82ポイントアップしたのは驚きです。投票日当日、中央中体育館の様子は、朝から投票者が並びはじめ、しかも子連れのヤンママ・パパが目立ったといいます。4年前の県議会選挙でもその傾向はありましたが、関係者からは、10数年間で初めて目にする光景だったと聞いています。普段あまり選挙に関心もなく、投票してこなかった若い世代の票を掘り起こしたことが、大きな勝因だと思います。(*注1 各投票所の投票率は、当日の数字です。期日前投票・不在者投票分は含まれておりません)

●「選挙事務所を市内数か所に移動し、移動先地区の自治会館で個人演説会を開き、そして地元の有力者と一緒に地域を回る 」そんな従来の進め方と同時に、今回は戸張さん自身が政策や街づくりへの思い、そして中原批判の演説をされていた。前座に自民党・公明党の市議がマイクを持ち、戸張さんの実績や経験、人物を持ち上げた後、本人が話をしていた。自らの考えを短い時間であっても、直接市民に訴えることは大切だと思う。朝の駅頭では、吉川駅と吉川美南駅で両候補の挨拶する姿が見られた。自民・公明の議員や支持者がオレンジ色のジャンパーを着用し、声を上げていた。中原さんの方は、選挙カーと政治団体の車がそれぞれ街宣活動をするとともに、自転車部隊を作って市内をくまなく回っていた。本人は自転車に乗って、選挙カーと連動して訴えるとともに握手を重ねていたようだ。自転車に乗って若さや行動力をアピールするのも良いが、これからの吉川をどのように創っていきたいのかについて、もう少し話をして頂きたかった。

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●選挙の結果は、1週間の選挙期間だけで決まるわけではありません。その前の4年間の活動の成果が問われます。戸張さんは、毎年元旦から新年会をハシゴし、各種団体の集まりに顔を出し常に有権者と接触してきました。市民と接触する市長としての公務は、それ自体、毎日が選挙運動です。特に、昨年から今年にかけては熱心に動いておりました。地域の高齢者やご婦人方の人気も厚かったようです。4期16年の実績、地縁・血縁、政党、団体等、後援会組織をフルに使って集めたのが11,916票です。戸張さんにとって逆風が吹く中で、よくこれだけの票を集めたことに驚くとともに、改めて吉川の固い岩盤の存在と自民・公明の力を感じます。

中原さんもまたこの4年間、吉川市内をくまなく歩きいろんな方々と接触してきたと思います。多くの方々に自分を知っていただき、相手の話を聞き、吉川の風土と人々の思いをつかんできたと思います。そうした活動の中で、中原さんへの支持が広がっていったと思います。選挙結果を受けて、いろいろな方からメールや電話そして直接握手を求められました。一様に「良かったですね」「吉川の夜明けです」「久しぶりに興奮しました」等いろんな声がありましたが、最も驚いたことは、普段はじっとしているような方(高齢者まで)が友人や知人に投票をお願いに行った・電話をしたという話をかなり聞きました。私も勝手連としていろいろな方にお願いしましたが、同じように、頼まれたわけでもないのに自ら進んで行動をされた方の力が大きかったと思います。

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●毎回選挙のたびに怪文書が出回ったりデマが飛び交うが、今度の市長選では、選挙の始まる前からインターネット上で中原さんへの誹謗中傷があふれていました。「国際新聞」のHPに、“イケメン中原恵人をめぐる黒々としたウワサ”を本人の写真とともにを掲載して、そこに『市民からの声』を載せていました。記事を見ると、どちらの側が仕掛けてきたのかが分かります。そこに『市民からの声』として投稿している人たちの顔も浮かびました。あまりにもバカバカしい内容で論評もできませんが、選挙が終わるまで続いていました。また、吉川医師会名で出された一方の側を非難、攻撃するビラも配布された。さらには、政治団体の街宣車の活動に対し言いがかりをつけ、騒ぎを起こして関係者を非難・恫喝し、そのことをFAX配布する等の選挙妨害も見られました。こうした相手側を貶めようとする一部の人たちの醜い言動は、およそ品位も常識もなく、一般市民にとっては逆効果であったと思います。私たちが日頃、議会で受けている仕打ちと重なります。こうした吉川の政治風土を変えていくのも、新市長の役割だと思います。

●中原恵人さんが3月7日から次の吉川市長になります。市民だけでなく、市役所、議会にとっても良かったと思う。今年1月、吉川市の人口は7万人を超えた。来年4月には市政施行20周年を迎えます。少子高齢化が進む人口減少社会、『住んで良かった、これからも住み続けたい』と実感できるまちづくりを進めるには、市民と地域、行政が本当に信頼・協力していかなければなりません。一部の人たちにとっての「住みよさ日本一」や言葉だけの「安心して子どもを産み育てられるまちづくり」等のお題目を、全市民が実感できるよう本気で進めて行かなければなりません。この時期、新しい風が入ることは良いタイミングだと思います。同じ系譜の深井さん、戸張さんが市長(町長)として長い間市政のかじ取りを担ってこられた。良い部分もあればそうでないところもありました。過去を否定するつもりはありませんが、まちの姿や住民の暮らしそして市民の思いも変わってきています。近隣市の環境も変わってきました。中原さんにすべてを『お任せ』をするのではなく、彼が立派な仕事が出来るよう皆で育てていくことが、『一票を入れた』私たちの責任ではないでしょうか。

*戸張市長の退庁式は3月6日(金)午後5時20分~ *中原新市長の入庁式は3月9日(月)午前8時20分~です。場所は吉川市役所正面玄関です。

 

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