〈夜間授業〉第10回「天皇陛下と美智子さま」

池上彰さんの〈夜間授業〉「〝戦後〟に挑んだ10人の日本人」第10回「天皇陛下と美智子さま」へ行ってきました。

昨年の4月27日、第1回「田中角栄」から始まり、江副博正・小泉純一郎・中内功・渡邊恒雄・堤清二・村上世彰と堀江貴文・石原慎太郎・池田大作と創価学会そして最終回が「天皇陛下と美智子さま」です。

私は第2回江副博正さんからの出席ですので、9回目となります。
文藝春秋社と因縁のある田中角栄元総理が初回というのも、なかなかの選定ですが、天皇退位に伴う改元が4月Ⅰ日に発表される直前の3月28日に「天皇陛下と美智子さま」というのも、戦後を読み直す趣旨から相応しいと思います。

これまで選ばれた戦後日本を代表する人物は皆、既成の秩序や規制、タブーに挑んだ人達で、強烈な個性を持ち、功罪相半ばする「毀誉褒貶」の魅力的な人だと言えます。

今回のレジュメには、1「戦後に挑んだ」とはどういう意味か 2吹上御所での夜のお茶会 3「象徴」の意味を考え続けられた 4アメリカ女性の家庭教師がついた 5テニスコートの恋 6平民出身皇后への二度のバッシング 7被災者への慰問がバッシングを呼ぶ 8慰霊への旅 9朝鮮半島への思い 10退位への思い とあります。

年譜には、1933年(昭和8)皇太子さま誕生から2019年(平成31)2月の在位30周年記念式典まで、お二人の記事が書かれています。それらを見ると、改めて『そういうこともあった』と思うとともに、レジメの内容に繋がってきます。

1959年(昭和34)4月10日、ご成婚のパレードのテレビ中継がありました。

皇居二重橋から東宮仮御所まで、6頭立ての馬車で、お供の馬車と皇宮警察・警視庁の騎馬隊が長い隊列を組んでいたのが印象的でした。沿道には沢山の人が見ていました。
まだ白黒のテレビでしたが、青山通りをゆっくりと走る馬車に乗った皇太子ご夫妻の表情をテレビカメラがとらえていました。

「天皇陛下」はこれまで、『象徴』の意味、『象徴天皇』とは何か、を考え続け、具体的な行動で示してこられたのではないでしょうか。しかも、かなり過激かつ大胆な判断に基づく行動だと思います。美智子さまは、陛下のよき理解者としてささえてこられたと思います。

日本の歴史上初めて、一般人と結婚。生まれた子どもの世話は乳母でなく、自分の母乳で育て、一家が一緒に暮らす。夫と子どもの食事を自ら料理する。
世間では当たり前のことですが、皇室内の側近は震え上がりヒンシュクをかったことでした。宮内庁内部から週刊誌へリークされた記事も多くありました。

被災者への慰問や慰霊の旅も、江藤淳や渡辺昇一等、保守の論客からバッシングを受けました。
1991年の雲仙普賢岳噴火でお見舞いへ行ったとき、両陛下が床に膝をつき、被災者と言葉を交わしました。この事も批判を受けました。地上戦で大きな犠牲者が出た沖縄への慰霊の旅についても、『天皇の仕事は、国家と国民のためにお祈りをしていればよい。』と批判されました。

「深く傷ついた」そうです。しかし、やり続けています。深い思いがあると思います。その思いを理解し応援する美智子さまの存在があって、貫いて来られたように思います。

昭和天皇が米国人家庭教師を依頼したといいます。狂信的なキリスト教徒ではないこと、日本ズレしていないことを条件にしたそうです。

昭和天皇が「人間宣言」をされた1946年(昭和21)、アメリカ人の児童文学者エリザベス・ヴァイニング(ヴァイニング婦人)が家庭教師に招かれました。

その後帰国した婦人が著書の中で、『皇太子は全てにわたり「受身」であった。私は、貴方はどうされますか?と問うた』と書かれています。

右派からは「米国によって、ばい菌を付けられた」と言われましたが、ヴァイニング婦人の教育は、象徴天皇の意味を考える一歩、また美智子さまとの交際、プロポーズに繋がったのではないかと思います。

戦後の日本。
農耕民族としての長い歴史、伝統に対する考え方、暮らしは、急激に変わってきました。
自然に対する畏敬の念、地域や家族とのつながり、周りを思いやる心は薄れ、過去の過ち、忘れてはいけないことも忘れられつつあります。

改めてご成婚60年を振り返ると、美智子さまは戦後日本の民主化の象徴として、「象徴天皇」とともに、皇室の果たす新たな役割を担ってこられたと思います。

*【4月8日追記】ご成婚の翌年(1960年・昭和35)2月23日、宮内庁病院で第一子浩宮徳仁親王(現皇太子殿下)誕生。出産後4日目から授乳を始められました。その時、詠まれた歌です。

含む乳の真白きにごり溢れいづ子の紅の唇生きて

(ふふむちの ましろきにごり あふれいづ このくれなゐの くちびるいきて)

*〈夜間授業〉については第2回以降(第4回中内功を除く)、ブログで取りあげましたので、ご参照頂ければ幸いです。