ワクチン接種問題、「個別契約」へ

「個別契約」と「医師会」との関係について、多くの議員が質問に立った。中原市長が、「区域外接種」による母親たちの不必要な負担をなくすため、4月から市内の3医療機関と予防接種について、「個別契約」を結んだことに対する質問でした。

代表質問・一般質問・委員会での質疑を要約すると、『中原市長が、医師会との合意がないまま3医療機関と個別契約を結んだことは、医師会との信頼関係を失い市民へのリスクをもたらす』、『関係悪化ではなく醸成を図るべき』と言った内容でした。『個別契約は白紙に戻せ』等、驚くべき主張も見られました。

私は議会の一般質問で繰り返し、緊急避難的措置として「個別契約」を結ぶよう戸張前市長に提案し強く求めてきました。「区域外接種」という異常事態を解消するためです。
それに対し、前市長・健康福祉部長は、『除名された医師と「個別契約」を結ぶことは、医師会との信頼関係を損なうばかりか、保健事業にとどまらず他の事業への影響、リスクが懸念される』と、要求を頑なに拒否し続けました。そして、医師会内部の対立、権力闘争の結果としての除名、市指定医療機関からの排除。こうした事態の収拾を図ろうとせず、その責任は全て、除名された医療機関にあるとしました。医師会(執行部)の主張を代弁してきたのが、これまでの市の基本的態度、対応でした。自民・公明・共産もこれを支持してきました。『大久保クリニックで公費予防接種と公費助成の子宮ガン検診が受けられるように求める請願』を不採択としました。

今回の自民・公明・共産党議員らの質問は、この延長線上にあると思います。『医師会の承諾も得ずに、個別契約を結んだのはおかしい。医師会との信頼関係を失い、今後市の医療行政への協力が得られない。』との主張は、これまで自分たちが言ってきたこと、行ってきたことからすれば当然かもしれません、

私は、違うと思います。これまでも同じことを何度も言ってきましたが、そもそも、「予防接種事業」は市民の税金を使い、市民のために市が行う保健事業です。どのようなやり方でやるかは、市が決めることで、医師会が決める事ではありません。まして、若い母親たちを困らせ、負担と不安を強いる「区域外接種」ではなく、『今まで通り予防接種が受けられるようにしてほしい』、『医師会の内部対立のツケを市民に回さないでほしい』という市民の願いです。異常事態を解消するのは市長として当然のことです。

4月15日から4月30日までの15日間に、大久保クリニックで81件の予防接種があったそうですが、市民の願いの大きさが分かります。これまでは一世帯で2万円~9万円の立て替え払いがありました。

また、信頼関係というのは一方通行の関係ではありません。市と医師会、市民と医師会、市民と市、三者間の関係です。吉川・松伏医師会は、昨年2月27日、公正取引委員会より独占禁止法で再発防止を命じる「排除措置命令」処分を受けました。

医師会は、インフルエンザ予防接種価格について、『推奨価格を決めていたものであくまで目安、強制はしていない。』と主張していましたが、公取は独禁法違反としました。全国で2例目(一例目は四日市医師会)となる事件でした。当日、NHKの全国ニュースでもトップニュースとして取り上げられ、吉川市の名前を全国に知らしめました。その後医師会は新聞に、『公取の指示に従い、自由診療でやります』と告知しました。しかし長い間カルテルを結び、市民に迷惑をかけていたことについての「お詫び」はありませんでした。吉川市から医師会に対する具体的な処分もありませんでした。こうした状況の中で、市と医師会、医師会と市民との信頼関係は取り戻せたのでしようか。

昨年の3月5日、東京地方裁判所で医師会からの除名処分についての(原告らが被告の会員たる地位を有することを確認する裁判)の証人尋問が行われました。大久保医師、石井医師、平井医師が証人として出廷しました。医師会の代表として平井医師は、「個別契約」の締結について、『医師会としては、市の決定に従う。』、個別契約したら『協力はしないとは言っていない。』と証言しました。

当然のことです。平成22年1月改正の「医師会の活動に関する独禁法上の指針」の中で、「医師会が団体として会員又は非会員が開設している特定の医療機関の事業活動の内容に対して、不当差別的な取扱いをしたり、不当な圧力を加える場合には、原則として違反となる」とし、参考例として「会員または非会員の行政機関等からの委託事業の受託について、これを不当に妨害すること、また健康保険医療機関等の指定について、非会員が指定を受けることを不当に妨害すること」等を挙げています。

奈良県生駒市では、県医師会と契約していた妊婦健診を市内の産婦人科医と個別契約しました。その時、県医師会が地域の医師会や産婦人科医に、『市から要請があっても応じないように』との通知を出して公取から注意を受けました。市は市民の利益を守るため「個別契約」を実施しました。

3月9日から4月8日の1か月間に5回、医師会と市は話し合いを行ったそうですが、市長は、『まだ医師会のご理解は得られていない状況です』と答えています。それはなぜでしょうか。医師会は、「個別契約」になぜ反対されるのでしょうか。もっとオープンに、自らの言葉で市民に説明頂きたいと思います。そうでなれれば、市民には分かりません。理解は得られません。市と医師会そして除名された医師は、胸襟を開いて話し合いをしたらどうでしょうか。感情的対立と憎しみ、相互不信が続いて困るのは我々市民です。

弱い人々を手助けするのが政治。声の小さい、力のない人の立場・状況を自分の問題として捉え、寄り添い、一人の市民として良心に従い考え行動するのが議員としての役割だと思います。声の大きな団体・組織の利益を守るのが仕事ではありません。『市民の利益を守る』ことが行政と議会・議員のもっとも大切な仕事ではないでしょうか。市が果たす役割は大きいと思います。

「マルサン」による騒音・振動・悪臭被害も、「子宮頸がんワクチン」による副反応の被害者も同じだと考えています。