築地市場で最初に驚いたのは、*「ターレ」です。
荷物を積んで市場内を走り回っています。それも、相当な台数がかなりのスピードで縦横無尽に動くので、ぼやぼやしていられません。
いろんな動きをするので危ないのですが、ぶつかったのは見たことはありません。 当時はすでに電気でした(多分)ので、エンジン音も臭いもありませんでした。
場内にはいろいろな施設があり、都の「検査室」と一緒だったと思いますが、フグの「除毒所」もありました。一般の方は立ち入ることは出来ませんが、フグの毒を厳重に管理しておりました。 また、フグの調理師免許を取るために、フグを捌く練習をする場所があり、取得を目指す調理師が来ていました。
私のいた会社でも食品のある店舗の魚屋さんには、必ずフグ調理師免許を持った方がおりました。 新設店舗では開店前に保健所の立ち入り検査があり、 免許証の掲示やフグの毒を入れるステンレス製容器(鍵付き)の確認をしていました。フグには、猛毒のテトロドトキシンがあります。毒性は青酸カリの1,000倍で、致死量は10グラムだそうです。
全国で、フグ調理師免許があったのは東京都だけでした。他府県では免許は必要ありませんので、怖いと思っておりました。
ただかなり前から「身欠き」のフグといって、毒を取り除いたフグを仕入れることが出来ますので、それを使っている所は大丈夫だと思います。
フグ調理師免許の試験は理論と実技だと聞きました。理論はペーパーテストですが、実技試験は、まず、丸のフグを部位に分け、毒のあるところと食べられる所を明確に分けること。手際の良さや時間も見ていたようです。
試験官が見ていますので時々、緊張のあまり手を切って血を流す受験者もおられるようです。手を切ったりするとアウトだそうです。
年に一度、「フグ供養」が行われていました。
隅田川の脇に大きな「いけす」があり、そのそばで放流をしました。
地元の衆・参国会議員、中央区の区長をはじめ、フグ料理組合やフグを取り扱っている業者の幹部等、関係者がフグを放流します。
私も参加したことがあります。お偉い方の後に、遠慮して少し小さめの奴を数匹。これぐらいの奴はそれでも、食べると「1万5千円はするな」と思いながら放しました。
放流の後は、宴です。市場の中ですが、どこでやったかは覚えていません。鮮度のよい生のマグロがメインで沢山あったのを覚えています。
ビールや日本酒と一緒に美味しいマグロを頂きました。市場関係者の集まりですので、やっぱりいい物が出ているなと思いました。
フグ料理屋の女将さん達も着物姿で大勢来ており、華やいだ雰囲気でした。
不謹慎にも、「これでフグが出たら最高」との思いも一瞬よぎりましたが、フグ供養ですので、フグは出ません。
*「ターレ」:昔の「大八車」です。荷物を積んで移動するための車てす。当初の動力はエンジンでしたので「バタバタ」とか言われていました。今はモーターで動きます。乗れるのは運転主一人で、後ろに細長い荷車がついています。