民主党ジョー・バイデン氏306人、共和党ドナルド・トランプ氏232人。米大統領選挙は13日、全米50州で獲得選挙人を確定し、バイデン候補が勝者となりました。
しかし、現職のトランプ大統領は「敗北宣言」を行うことなく、勝つ見込みのない裁判を起こし続け、政権移行ヘの協力もせず混乱を広げています。任期もあと2ヶ月ですが、国防長官を解任し、CIAやFBI長官の首を切ろうとしています。国と社会の安全を脅かす異常な行動です。
トランプ大統領の4年間そして今回の選挙で、アメリカ社会の「分断」はより深刻化しました。
アメリカ・ファースト(自国第Ⅰ主義)は、貿易・外交、同盟国との関係等、世界中で摩擦を起こしアメリカの威信を傷つけ、結果としてアメリカの「孤立」を招きました。
今回の選挙結果はバイデン氏に対する積極的な評価というより、「この先4年間トランプにやらせたら、米国と世界が大変なことになる。やめさせなけれは゛」との思いが、形になったのではないでしょうか。
バイデン政権は、アメリカ・ファーストから多国間協調へ、そして南北戦争以来最も深刻なアメリカ社会の「分断」修復に取り組むことになります。パリ協定やWHOへの復帰をはじめ、NATO同盟国や国際機関との協力の枠組みを大切にする方向に転換していくと思います。
バイデン氏は政権移行に向け、新型コロナウィルス感染対策専門家チームを設置し、対策にあたるとしています。アメリカでは、感染者が1日あたり10万人を超えすでに1000万人が感染、死者も23万8千人と世界最多。社会の不安定化が続いています。選挙戦で争点とした感染症対策にまず取り組むのは、当然だと考えます。
社会の分断と対立を解消することは、かなり難しい課題だと思います。
対立をあおり、支持を固めるトランプ氏の手法は浸透しています。トランプ氏の得票数が4年前より800万票増えていることは、根強い支持があることを示しています。その根底にあるのは、「格差」です。政治(政党・政治家)に対する強い不信感もあるように感じます。
また大統領選挙と同時に行われた連邦議会の構成がどうなるかという問題もあります。下院は民主党の過半数が確実になりましたが、上院はまだ決まっていません。政府人事や条約の承認権を持つ上院で共和党が過半数を握れば、厄介なことになります。来年1月5日、ジョージア州での選挙結果次第です。
最も大きな課題は、中国との関係です。あらゆる問題に関連しています。
バイデン氏は、「中国に対抗するために、米国経済を強くする」「中国に国際ルールを守らせる」と言っていますが、簡単ではありません。
世界第2の経済力と第3位の軍事力を持つ中国は、ますます自信を強めておりアメリカのすぐ後ろまで迫っています。
中国からすれば、「第2次大戦後の秩序はアメリカにとって都合よく作られている。今までは言えなかったがこれからは異議を申し立てる」と、米国に代わる新たな世界秩序を作ろうとしています。
バイデン政権にとってこれからのかじ取りは、国内外ともに相当難しいと思います。しかし、世界最大の富と最強の軍事力を持つ米国には、その力を自国の安定だけでなく、世界の平和、環境、人権、民主主義を守ることに役立ててもらいたい。その責任があります。
米国社会の混乱・対立の原因である「社会の分断」は、行き過ぎた「格差」から生まれたものだと思います。
米国社会の現状は、対岸の火事ではありません。私たちの目前まで来ている「明日のわが身の姿」だと感じています。