昨日のNKK朝ドラ、「ひよっこ」で、初めて「カツサンド」を食べる家族のシーンがありました。
東京オリンピックの前、東京へ出稼ぎに来ていた父親が、稲刈りに合わせて帰省する前に初めて食べた「ハヤシライス」。その店(洋食屋)で頂いた「カツサンド」を夕食時に、家族とともに食べる様子です。
子ども達も、初めて見る「カツサンド」に感激し喜びを隠せない。箸でつまむ。初めての味に感激するがそれ以上に、久しぶりに父親が帰り家族皆で食卓を囲める幸せを噛みしめている。
舞台は奥茨城の村。父親が働いているのは、東京の霞が関。ビルの工事現場での仕事。出稼ぎ、集団就職の時代です。
何時だったか、はっきりとは覚えていませんが、私が初めて食べて感激したのは「ロースハム」でした。
子どもの頃食べていたのは、「ソーセージ」でした。マルハ大洋漁業のソーセージ。原材料は魚肉です。生のままでは美味しくありません。フライパンに油をひき、焼いて食べていました。また、「プレスハム」とか言ったハムも。原材料は豚肉です。少し厚めに切ったハムを焼くと中の脂身が溶け、醤油をかける結構美味しいものでした。「ベーコン」と言えばクジラのベーコンでした。
当時、日頃の食卓に並ぶものは野菜と魚です。魚はアジ・サバ・イワシ・ニシンそしてマグロです。焼いたり煮たりが中心ですが、マグロは刺身でした。普段は、ホンマグロの「ぶつ切れ」です。マグロも今ほど高級品ではありませんでした。
野菜は、大根、カブ、ホウレンソウ、小松菜、白菜、キャベツ、玉ねぎ、人参、ゴボウ、ジャガイモとサツマイモ、ハス、トマト、山芋等。
野菜と魚が中心の食生活でした。肉はクジラと鶏、豚肉。牛肉を食べることはなかったと思います。
湯豆腐やふろふき大根、コロッケ、メンチカツ、カレーライス、ハヤシライス、おでん。イワシのつみれも。そばやうどん、すいとんも食べました。
寿司や大皿に盛った刺身の盛り合わせ、天ぷらそば等はお客様専用でした。
今はたいていのものは、食べることが出来る時代になりました。トマトやイチゴをはじめ、いろいろな物が一年中売られています。いつでも、なんでも食べられる時代ですが、「季節」を感じることがだんだん少なくなってきています。
店頭に並ぶものは、規格化され姿・形も美しく整っています。しかし、旬の物でないものはやはり味や香り、旨みが違います。
これまで、いろいろな物を食べてきました。しかし、子どもの頃食べた「豆腐」や「マグロ」のような美味しさに出会ったことはありません。
戦後の貧しい時代。お腹を空かせている子どもにとっては、「何でもおいしく感じた」のだろうというのもあると思います。
でも、それぞれに味や香りがあり、美味しいものでした。人参は人参臭く、トマトはトマト臭さがありました。アジ・イワシ・さんまも美味しく感じました。食卓に上る魚、野菜は「旬」の物でした。「旬」の物が最も多く出回り、安かったからです。
いつでも、なんでも食べられる時代。私たちは、一つの豊かさを手に入れたことは確かです。しかし、味のない『トマト人間』が増えてきたことも確かだと思います。