一昨日、映画を見ました。
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書。 主演はメリル・ストリープとトム・ハンクス。監督はスティーブン・スピルバーグです。
1970年代初め、泥沼化していたベトナム戦争について調査・分析した政府の機密文書を報じたワシントン・ポスト紙の実話に基づく物語です。
35代大統領ジョン・F・ケネディ、36代リンドン・ジョンソン大統領の下で1968年迄、国務長官を務めたロバート・マクナマラがまとめた政府の「機密文書」を入手し、これを公表するか、見送るかの判断を迫られるワシントン・ポスト社主(メリル・ストリープ)の苦悩を描いています。
編集主幹(トム・ハンクス)は掲載を主張するが、会社の重役陣や顧問弁護士等は、『会社そのものが無くなり、逮捕される恐れがある危険な賭け』と反対。
ライバル紙のニューヨーク・タイムズが少し前にスクープをしたが、裁判所から出版差し止め命令を受けている状況の中、社主(メリル・ストリープ)が下した判断は、『報道の自由を守る』。
ケネディ大統領を含む歴代政権がつき続けてきた「ウソ」を暴き、掲載しました。
ニューヨーク・タイムズとともにワシントン・ポスト関係者が最高裁判所に呼ばれる。この時の大統領が37代リチャード・ニクソンです。 下された判断は、『新聞は、権力者のためでなく、国民のためにある』。
トランプ大統領が国内外を驚かすことを次々と行う中、スピルバーグ監督が皆に言いたいことだと思いました。 日本でも安倍政権が続いています。私もそう思います。
ベトナム戦争が終結したのは、1975年4月30日ですが、いつから始まったのかについては諸説あります。一般的には、ケネディ大統領の時代、1961年に起こした、アメリカの本格的軍事行動を戦争の始まりとしています。宣戦布告なき戦争と言われています。元々の始まりは、南ベトナムでの内戦です。
第2次世界大戦後、フランスの植民地であったベトナムは、ベトナム民主共和国(北ベトナム)とベトナム共和国(南ベトナム)に別れました。親米の南ベトナムに対し、北ベトナムの後ろにはソビエトがいました。冷戦の時代、アメリカとソビエトの代理戦争的な側面もありました。アメリカは「ドミノ倒し」理論で、『北ベトナムが勝利すればベトナムだけでなく東南アジアが次々と共産化してしまう』。また、『中国共産主義封じ込め』という意味もありました。
一方、北ベトナム側はベトナム民族解放闘争で、南を開放して南北を社会主義国として再統一することを目標としました。そして、アメリカの新植民地主義に対する戦争であると位置づけていました。
映画では、国務長官マクナマラが調査・分析した「機密文書」には、『アメリカはこの戦争には勝てない』。しかし、今公表することは出来ない。将来、ベトナム戦争の歴史的検証を行う時のため、まとめたものである。そして、歴代大統領が戦争を止めることが出来なかったのは、『自分が大統領の時に、アメリカが負けるわけにはいかない』ことだった。戦争を続けた理由の3割が「ドミノ倒し」の防ぐこと、7割は『自分が大統領の時に、アメリカが負けるわけにはいかない』からと描いています。勝てない戦争と分かっていながら、国民にウソをつき、若者を戦場に送り続けたとしています。
この時代は、私が高校・大学そして社会人になった頃でした。アメリカではすさまじい「反戦運動」が起こっていました。日本でも新聞や雑誌、テレビの報道が続いていました。朝日新聞特派員だった開高 健がベトナムから送り続けたルポルタージュ(ベトナム戦記)も出ていました。べ平連(ベトナムに平和を市民連合)が組織され、大学構内には、「戦争反対」の立て看板が置かれアジ演説とデモは日常の風景でした。
新宿西口地下広場では、「戦争反対」のフォーク集会が毎週(土曜日?)開かれていました。広場には、数百人、数千人が集まり「反戦歌」を歌っていました。勤め帰りのサラリーマン・高校生・大学生・オジサン・オバサン達が一緒にフォークソングを歌いシュプレヒコールを叫んでいました。自分の意思で集まってくる人達でした。また、いろんな所にフォークゲリラが出没して、居合わせた人と歌っていました。
やがて「地下広場」は、「地下通路」と改められました。市民が見守る中、警察官と機動隊が、『ここは通路です』『立ち止まらないでください』『座らないでください』とアナウンスするようになりました。
1975年4月、ベトナム戦争は終わりました。
日本では、『横田基地でいいアルバイトがある。ベトナムで死んだ米兵の遺体を洗う仕事は1万円もらえる』。が話題に上らなくなりました。今度は、アメリカへ帰還した人達の中に、『心や身体に傷を負い未だに社会復帰出来ない人や、枯葉剤(ダイオキシン)の影響を受けている方がいる』。『時間を経て、仕事や家庭での生活が難しくなった人もいるようだ』。との話が伝わってきました。
いつの時代でも、犠牲になるのはまず「若者」ですが、家族・友人も心に傷を負います。社会全体が深く傷つくのが「戦争」だと思います。
*追記4月8日 1 新宿西口地下広場での反戦フォーク集会で歌われていた歌は、「受験生ブルース」「自衛隊に入ろう」「機動隊ブルース」「友よ」等でした。2 その後、ワシントン・ポスト紙が追及した事件として、「ウオーターゲート」があります。民主党全国委員会本部へ不法侵入し、盗聴をした事件です。37代大統領リチャード・ニクソンが関わっていたとして、民主党だけでなく共和党からも批判が起こりニクソンは辞任しました。任期中に辞任した大統領は、ニクソンが初めてだそうです。3 ロバート・マクナマラは国務長官を辞めた後、世界銀行の総裁になりました(1968~81年)。