友人から展示会図録を送っていただきました。
埼玉県立歴史と民俗の博物館で開かれている「特別展 東国の地獄極楽」の図録です。埼玉県を中心に東国で展開された「浄土信仰」に関する歴史と美術を紹介した展覧会で、仏教絵画や仏教彫刻、*聖教(しょうぎょう)等が納められています。
曼荼羅図に描かれた極楽の世界もよいのですが、やはり六道の世界の一つである「地獄」の八大地獄、十王地獄図等、地獄図を描いたものが興味深いと感じます。
常に死を意識せざるを得ない時代の中で、「死後はどうなるのか」は大きな関心事だったと思います。地獄を厭い、極楽の世界に行きたいと願う「浄土信仰」ですが、人々の切実な思いだからこそ、急速に広がったのではないでしょうか。
仏教における世界観は、輪廻、六道の世界です。
①天(天人)②人(人間)③修羅(戦いに明け暮れる)④畜生(人以外の動物。襲い襲われ、使役される)⑤餓鬼(飢餓から逃れることが出来ない)⑥地獄(地下で際限のない責め苦に遭い続ける)の6つに分かれた世界で、輪のように繋がっているそうです。
命のあるものは六道をめぐり、どの世界に生まれるかは生前の行い(悪行と善行)によって変わります。それを決定するのが、閻魔王をはじめとする十王です。
死んだ後の旅は、十王の裁きを受けてから始まります。
地獄の世界は、八つの地獄(八大地獄)に分かれ、罪の大きさで変わります。
一番軽い等活(とうかつ)は、殺生を犯した罪人が墜ちる所で、鬼に鉄棒などで痛めつけられ苦しみが続くことになっています。最も重いのは、阿鼻(あび)で、父母や僧侶を殺したものが行く地獄の最下層です。ここに墜ちるまで2000年かかり、責め苦が終わるまで、349京2413兆4400億年かかります。
5番目は大叫喚(だいきょうかん)で、ウソつきが墜ちる地獄です。酒にまつわる悪事をしたものが大釜で茹でられる(4番 叫喚)苦しみの10倍の苦しみを受けることになります。
地獄・極楽の曼荼羅や絵図は、よりよい世界に生まれ変わるためには、善行を積むことが極楽浄土へ繋がる道だと示しています。
浄土宗が広がって行った時代。人々の、「輪廻」や「善悪」についての思いはどのようなものだったのでしょうか。どのような「善行」を積んでいたのでしょうか。
*聖教(しょうぎょう): 釈迦の説いた教えやそれをしるした仏教の経典・書物
*「特別展 東国の地獄極楽」は5月6日まで。休館日は月曜日ですが、4月29・5月6日は開館。私も、GW中には行きたいと思っています。
*4月22日追記:人は一生の中で、「良いことも悪いこと」もして終わるものだと思います。生まれた時からの極悪人はいません。これまで私と関わった人達を見ても、善人も時には悪いことをします。その反対もあります。私もその一人です。閻魔様をはじめとする十王は、どんな基準で判決を下すのでしょうか。