「太陽」という雑誌で、荒川豊蔵や加藤唐九郎を知り、備前や志野、織部、黄瀬戸、信楽そして古伊万里、古九谷の美しさに驚かされました。
志野や織部の斬新なデザイン、色づかい、草花の絵付け。こんなものが、信長や古田織部の時代に作られていたとは信じられない驚きでした。
大学が渋谷にありましたので、根津美術館や駒場の日本民芸館へはよく行きました。 日本民芸館では、柳宗悦、バーナード・リーチ、河井寛次郎、濱田庄司たちが創めた民芸運動に出会い、人が生活のために使う器や道具に興味をもちました。
かつては、衣・食・住に係わるものは全て、自然のものを利用していました。 食生活に必要な、お椀・箸・まな板・桶やひしゃく、ざる・かご、石臼、瓶(かめ)やお皿等、それぞれの土地で身近にある木・竹・石そして土を使って作られています。 かつて、つくられた物や伝統の技を受け継いでいる物を見ると、改めて、人間の知識と知恵、豊かな感性に驚きます。
益子へは2人(私と妻)で時々行っていました。結婚する前の方が多かったと思いますが、街をあちこち歩き、窯元をのぞいていました。 濱田庄司をはじめ島岡達三、加守田章二等、有名な方々が活躍していましたが、若い作家も移り住んできていました。
濱田庄司の*美術館が出来たと聞いて訪ねてみました。小さなところでしたが、二人でしばらく見ていると、そこの責任者らしき人が、濱田庄司さんの工房を見せてくれると言う。
登り窯や工房の中を案内していただいた。 そこで制作している様子が直に、伝わってくるような感じでした。そして、印象的だったのはどの場所だか覚えていませんが、家具が無造作においてあったことでした。
朝鮮の箪笥に日本の舟箪笥、イギリスやヨーロッパのテーブルと椅子、南米、アフリカのものもありました。沢山ありました。 案内をして下さった方からは、濱田庄司は収集家としても一流で、世界中から家具だけでなく、陶磁器やいろいろな物を集めている、と伺いました。
私が感じたのは、いろいろな国や地域、時代も異なっているのに「違和感」がないことでした。不思議な場所でした。 それは、『人が生活のために使うものは、シンプルで機能的で美しい』からだと思いました。
*正しくは、濱田庄司記念益子参考館です。その後古民家や蔵、門なども移築しており、参考館の規模も拡大されているそうです。何十年も行っていませんので、また行ってみたいと思います。
*荻窪駅西口に「いづみ工芸」という店があり、濱田庄司や島岡達三の作品をはじめ、全国の焼き物や民芸品を販売していました。結婚するまで荻窪(実家)にいたので、時々のぞいていました。オモシロイ物をいくつか買いましたが、現在は何一つ残っていません。