5月19日から「広島」で始まった主要7カ国首脳会議(G7サミット)。
「債務上限」の引き上げ問題で、オンラインによる出席になることもあるとしていた米バイデン大統領が参加し、また戦争当事国のウクライナゼレンスキー大統領も電撃的に来日しました。ウクライナへ最大の軍事・経済的支援をしている米国大統領が直接参加し、ゼレンスキー大統領が各国首脳に支援継続を直接訴える環境が整えられたことは、実効性ある議論を深め、G7サミットの役割と関心を一気に高めました。
世界中が心配しているロシアによる核兵器使用の威嚇を止めさせ、核軍縮・不拡散の話し合いを被爆地「広島」で開催し、その訴えを世界へ発信することは大きな意味があると思います。
今回のサミットで、インドやオーストラリア、ブラジル等8カ国の首脳を招いたことは良かったと思います。ウクライナとロシアとの戦争に距離をおく国々が参加したことは意義があります。特に、G20議長国インドのモディ首相が「国際社会が発展途上国の核心的な懸念に対処し続けられるよう、日本や同様の考えを持つ国と協力していく」「国家の主権と領土の一体性尊重に基づく国際秩序を強く支持する」と表明したことは、ロシアに対する強いメッセージになります。
一方、「軍事・経済支援を続けることは戦争を長引かせる。G7サミットにより、さらに世界の分断と対立が深まる」という考えや、「ロシアと中国を招き、直ちに停戦を求め、戦争を終わらせるために日本は努力すべき」という主張もあります。
それも一つの考え方ですが、実際にそれが出来るかどうかは難しい問題です。日本にそれをやり遂げる決意と能力そして国民的合意があることが前提となりますが、政府と国民にそれはあるのでしょうか。同時に、当事国が停戦や戦争終結へ向けてのテーブルに着く用意が必要です。ウクライナが「反転攻勢」をしようとしている今、それを行うことは出来ない状況だと思います。
戦争終結へ向けての合意を図るには「時期」があり、ロシアとウクライナの主張・条件を調整しなければなりません。その為には、G7・G20諸国等の協力が必要です。一筋縄ではいかない問題を、したたかな国々を相手にやり抜くには強力な交渉力・調整力が要求されます。外交力は、経済と軍事力の裏付けがあって成果を上げられるのが現実です。
それ程遠くない「時期」に戦争終結へ向けて、ロシアとウクライナの間で話し合いが始まると思いますが、調整の役割を果たすのは、やはり米国・中国・インド・G7ではないでしょうか。
現在の状況下で、かなり頑張った「広島」G7サミットの開催だと思います。