11月25日、最高裁で判例を60年ぶりに変更する判決が言い渡されました。
地方議会が議員に対する懲罰のうち、「出席停止」処分の取り消しを裁判所に求めることが出来るかどうかが争われた訴訟で、最高裁大法廷は「出席停止は裁判の対象になる。」との判断を示しました。
1960年に出された最高裁判例では、議員に科される懲罰で最も重い、議員の身分を失う「除名」以外は裁判の対象とならず、議会の内部規律に委ねるべき。
「出席停止」は、議員の権利行使の一時的制限に過ぎない。との立場でした。
今回の判決では「出席停止になれば、住民の負託を受けた議員の責務を十分に果たすことが出来なくなる。」また、補足意見で「憲法が裁判を受ける権利を国民に保障していることから、司法審査の例外とするケースは厳格に限定する必要がある」との意見を示しました。
地方自治法では、地方議会は議員に対し、「除名、出席停止、陳謝、戒告」の懲戒処分が出来る。とあります。
実際の運用では、多数派による少数派へのイジメや発言を抑えることに多くの議会で使われています。議員同士の対立や恨み、妬み、嫉みもあると思います。
議会での発言の「言葉尻」を捉え、「発言」の取り消しや訂正、お詫びをさせるのは珍しいことではありません。
一般質問前であれば、質問の取り下げ。質問途中ではその時点で終了させることにも使われます。いやらしいのは、それを自主的にさせることです。抵抗すればするほど、懲戒処分のランクが上がっていきます。
かつて議会では、「男を女に変えること以外は何でもできる」と言われていました。死語になっていると思いますが、「数は力」は生きています。
時々、報道されますが「多数派によるいわれのない議員処分は全国の地方議会で見られます。」
以前、ある市の議員から「議会中にゴルフをしていた議員」を「追求した議員」が懲罰された。という話を直接聞いたことがあります。
良いこと、悪いことに係わらず「数は力」です。
*今回の最高裁判決により多数派による懲罰処分の乱用は、ある程度抑制されると期待されますが、対立関係にある議員の構成が拮抗しているところでは、1人の「出席停止」は議案の可否を左右しますので、今後も続くと思います。また、議長は中立の立場(可否同数の場合は意思を示すことが出来ます)ですが、多数派になるために「議長」を押し付け合う所も見られます。いずれにしても、どちらが主導権を握るかの戦いは続くことになります。国会の「議院内閣制」と異なり、地方議会は「二元代表制」です。本来は与党(市長派)も野党(反市長派)もないはずですが、実際にはそうではありません。たまに、反市長派が多数を占める議会もあります。どちらも、市と市民にとって良いことではありません。議員一人ひとりが議論を尽くし、自ら判断すべきだと思います。