「イスラム国」に拘束されていたジャーナリストの後藤賢二さんが殺害された。湯川遥菜さんに続く残虐な犯行で言葉もない。ヨルダン軍のパイロットもまた。
「イスラム国」のように国家を名乗りながら、まったく国の常識では考えられないテロや暴力で人々を抑圧し、街を破壊する集団に対しどう対応すべきなのか。
この恐ろしい集団に対し、『テロには屈しない』と国際社会が連携して対応しなければならないが、どのように対応したらよいのだろうか。
日本としては、軍事的関与は出来ないし、すべきではないと思う。しかし人道的支援は当然として、争いの絶えない中東地域の平和と安定のために行う外交や政策、事業等の取組をどのように進めたら良いのか、よく分からない。少なくとも、軍事力だけでは解決できないことは確かだと思う。
中東の歴史や現状、イスラム教についても、私はよく理解していない。しかし、「イスラム国」のような理解しがたい過激派組織の国が、なぜ生まれ勢力を拡大してきたのかを考えた時、その背景は単純なものでないことだけは分かる。
「イスラム国」の中心にいるのは、かつて、イラクでフセイン政権を支えていた官僚や軍人だという。米英主導で行ったイラク戦争の結果、イスラム教の宗派間対立は激化した。イスラム国の戦闘員となっている若者達は、ヨーロッパへ移民として渡った人たちへの差別や、失業・貧困が関係している。世界的な『格差社会』の拡大も要因の一つだろう。 また、イスラエルとアラブ諸国との関係やエジプトの状況も関係していると思う。さらに、かっての植民地政策も根っこにあるように思う。中東各国の歴史や文化、宗派や部族、反政府勢力の力関係、国民の不満と怒り、アメリカやヨーロッパの関与、イスラエルとの関係等、複雑に絡んだ問題と状況から生まれたのが、『イスラム国』ではないだろうか。武力で潰しても、これらの問題を取り除かなければ、再び第2・第3の激派組織が生まれ、暴力の連鎖は続くことになるだろう。
日本は、この問題解決のために何をしたらよいのでしょうか、何が出来るのでしようか。
私としては、今まであまり関心を持ってこなかったアラブ世界の歴史を学びたい。全体像を理解し、絡み合った糸を解くために、私たちが果たす役割について冷静に考えていきたいと思う。
それにしても、国家間や内戦で犠牲になるのはいつも一般の市民。家族や友人・隣人が理不尽な痛ましい目に合い、家や街を破壊し、平穏な暮らしを奪ってしまう戦争は、中東だけでなくウクライナでもアジア、アフリカでも続いている。アメリカを中心に行っている有志連合の空爆で、犠牲となっている人たちの中にも大勢の一般市民がいる。テロ組織殲滅のための、「正義の戦い」と言っても、市民が犠牲となることに変わりはない。自身の無力感と何ともやりきれない思いが募る。
*掲載が1日遅れました。申し訳ありません。