ニューヨーク外国為替市場で円が一時151円90銭まで下落したことを受け、21日深夜から22日未明にかけて日本銀行による円買い・ドル売りが実施されました。為替介入の事実を明かさない「覆面介入」だったそうです。
日銀の黒田総裁はこれまで、「円安」は日本経済に「総じてプラス」との立場でしたが、10月19日の国会では、「最近の円安の進行は、急速かつ一方的で日本経済にマイナスで望ましくない」と述べています。しかし、アメリカとの金利差を縮めるため金利を上げるとは言っていません。
「円安」の要因の一つが日米の金利差ですが、もう一つは日本経済の成長力に対する疑問にあるようです。
ウクライナとロシアの戦争でエネルギーや食糧問題が表面化する中、資源が乏しく食料自給率も低い日本の成長は今後難しいのではと、世界のマーケットが見ていることです。
この二つの要因を取り除けば、円高へ向かうことになるのでしょうが、実際にやるとなると相当難しいことだと思います。
金利差については、日米の向いている方向が正反対です。
アメリカでは国内の記録的なインフレ(物価上昇)をおさえるため、FRBが繰り返し利上げを行っており、大統領も「ドル高」を容認しています。
激しい物価上昇が続く中で生活を維持するため、より高い賃金を求め毎月数百万人が離職・移動していることから、人手不足と賃金上昇が止まらず、「物価と賃金の悪循環」に陥っている状況から抜け出せないことです。
日本の成長については、バブル崩壊後「失われた30年」と言われる低成長から抜け出せず、相対的に国力が弱くなりました。「アベノミクス」の失敗は、それを加速したと思います。
ウクライナ危機で日本の基礎的条件の脆弱さが再認識された結果、日本経済の成長力に対する疑問に繋がっているのではないでしようか。
エネルギー・食料そして新たな技術や産業への転換は簡単にできることではありません。一つ一つ積み上げて行くしかありません。
政府がまずやるべきことは、「円買い・ドル売り」をアメリカを始めG7の国々に協調介入をするよう依頼することです。為替介入は世界全体でやらなければ効果はありません。また、アメリカに「物価と賃金の悪循環」を断ち切る政策を進めるよう求めることだと考えます。
*日本への理解と協力を得ることは簡単ではありませんが、政府の仕事です。口先介入や時々の円買い・ドル売りは一時的で、全体の流れを変えることは出来ません。かといって、手持ちの外貨準備を全て使っても同じです。そのことは、ヨーロッパ諸国で実証済みです。
*為替介入の成功例は今回とは逆ですが、東日本大震災発生直後にG7中央銀行が協力してドル買い・円売りの協調介入をしました。目的は急激な円高による日本経済・金融への影響を最小限にするためです。
急激な円高になった理由は、投機筋が日本の生保・損保、企業等が保有する海外資産を売却して円に替え、保険金の支払いや震災の損失を埋めるのではないかと予測して円買いを仕掛けた。また日本政府が復興のためドルを売ることも想定したと言われています。